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診療科・部門 Section

診療科・部門 Section

臨床工学部

臨床工学科(CE室;医療機器安全管理室)

CEはClinical Engineerの略称で、臨床工学技士を指します。1988年に臨床工学技士法として制定された、まだまだ新しい職種です。

当院臨床工学科(CE室;医療機器安全管理室)は7名のスタッフで『医療機器のスペシャリスト』を目標に掲げ、ますます高度化する医療機器を安全に運用するために保守管理業務に当たっています。また医療機器の安全管理にとどまらず、様々な臨床業務にも携わり、チーム医療へ積極的に参加しています。

当院・臨床工学技士出身校

日本工学院専門学校・さくら総合専門学校(旧・東洋パラメディカル学院)・東京工科大学・東海大学・杏林大学・北里大学

少人数ながらも和気あいあい、

  • 患者さんの安心
  • 安全を第一に考えた

厳しさの中にも楽しい職場作りを目指しています!

臨床工学技士・倫理綱領

倫理要綱

  • 臨床工学技士は、人々の健康を守るために貢献します。
  • 臨床工学技士は、チーム医療の一員として、専門分野の責任を全うします。
  • 臨床工学技士は、医療を求める人々のため、常に研鑽に励みます。臨床工学技士は、常に高い倫理観を保ち、全人的医療に貢献します。

倫理規定

湘南厚木病院・臨床工学科・臨床工学技士は、臨床工学技士として社会的使命とその責任を自覚し、常に自己研鑽に励み、自らを律するため倫理規定を定め、社会に寄与するものとする。

  1. 臨床工学技士は、人々の健康を守るため、医療・福祉の進歩・充実に貢献する。
  2. 臨床工学技士は、個人の権利を尊重し、思想、信条、社会的地位等による個人を差別する事はしない。
  3. 臨床工学技士は、業務上知り得た情報の秘密を守る。
  4. 臨床工学技士は、常に学術技能の研鑽に励み、資質の向上を図り高い専門性を維持し、臨床工学の発展に努めなければならない。
  5. 臨床工学技士は、生命維持管理装置等の医療機器の専門職であることを十分認識し、最善の努力を払って業務を遂行する。
  6. 臨床工学技士は、常に他の医療職との緊密な連携を図り、より円滑で効果的、且つ全人的な医療に努め信頼を維持する。
  7. 臨床工学技士は、後進の育成に努力しなければならない。
  8. 臨床工学技士は、不当な報酬を求める等の法と人道に背く行為はしない。
  9. 臨床工学技士は、互いの交流に努め人格を調練し、相互に律する。

附則1.この綱領は平成26年6月1日より施行する。

心臓カテーテル室

心臓カテーテル室業務

心臓カテーテル室では、冠動脈や心臓弁の状態を造影により検査や治療を行ったり、また心臓ペースメーカーなどの不整脈治療を行っています。CEは工学知識に基づいて機器を操作し、医学知識に基づいて全身状態の把握に努め、積極的な治療への関わりを持つことで、臨床における重要な役割を担っています。

各種造影検査に伴う解析業務

ポリグラフを用い検査中のバイタルサイン(心電図・血圧・脈拍・動脈血酸素飽和度など)を管理します。動脈圧・心電図・動脈血酸素飽和度などを監視し、冠動脈造影、頸動脈造影、下肢動脈造影、バイパス造影、腎動脈造影などの様々な造影検査を行います。また、Swan-Ganz cathetersを用いた右心系カテーテル検査やpig tail catheters等を用いた左心系カテーテル検査などで、ポリグラフを使用し心内圧測定、弁口面積測定、シャント率測定なども行っています。

Intervention関連業務

Interventionには経皮的冠動脈インターベンション(Percutaneous Coronary Intervention;PCI)と、末梢血管インターベンション(Percutaneous Peripheral Intervention;PPI)があります。検査同様、ポリグラフを使用し患者のバイタルサインを監視・記録します。また、Interventionで使用される血管内超音波(Intravascular Ultrasound;IVUS)などの機器を使用し血管径や血管内腔、プラークの性質などを計測・解析をします。血管径の測定は冠動脈治療に用いるBalloonやStentのサイズを決めるに当たって非常に重要なファクターとなります。

ペースメーカー関連業務

ペースメーカーは、除脈性の不整脈に施行される治療です。CEはペースメーカーの植込み・交換時および外来での定期チェック時にプログラマーを用いて、波高、閾値、抵抗値などを測定し、医師の指示のもと適切な設定のプログラミングなどをしています。

補助循環装置関連業務

補助循環装置は、自己の心機能が回復するまでの間、一時的に心臓と肺の機能を補助・代行する装置です。補助循環には、心臓の収縮力を有効的に利用(圧補助)する大動脈バルーンパンピング(Intra-Aortic Balloon Pumping ;IABP)と、ポンプ機能を補助・代行(流量補助)する経皮的心肺補助(Percutaneous Cardio Pulmonary Support ;PCPS)等があります。

ポリグラフ
心臓カテーテル検査・治療において、標準12誘導心電図、心内心電図、心内圧、心拍出量、動脈血酸素飽和度、呼吸曲線などをモニタリングします。また、心内圧解析や弁口面積、シャント率・シャント量、血管抵抗などは演算機能を用いて、解析・計測されます。
▶保有機器:日本光電社製・RMC-5000
IVUS
Interventionにおける血管内超音波(Intravascular Ultrasound;IVUS)は、血管径・病変長・プラーク量・プラーク分布などの情報を得るために、必要不可欠な診断法の1つであり、IVUS画像の見解や計測差異は冠動脈治療に用いるBalloonやStentのサイズを決めるに当たって非常に重要なファクターとなります。
▶保有機器:Philips Volcano社製・IVUS imaging
FFR
冠血流予備量比 (fractional flow reserve;FFR) とは、冠動脈内に狭窄病変があるとき、狭窄病変によってどのくらい血流が阻害されているかを推測する指標です。 心臓カテーテル検査による狭窄度から経皮的冠動脈インターベンションなどの必要性を判断するために行います。
iFR
瞬時血流予備量比(instantaneous wave-free ratio;iFR)は、冠動脈狭窄の重症度を血管拡張薬(アデノシンなど)の投与なしに評価できるため、FFRに代わる指標となる可能性が示唆されている。
IABP
大動脈内バルーンパンピング(Intra-Aortic Balloon Pumping;IABP)は、経皮的補助循環の一つで重症心疾患患者のデバイスとして広く使用されています。効果として、冠動脈血流の増加、平均大動脈圧の維持、心仕事量の減少、心筋酸素消費量の減少があります。急性冠症候群やハイリスクPCIなどで使用されることが多く、心臓の収縮力を有効的に利用(圧補助)する機器です。
▶保有機器:MAQUET社製・CS-300
PCPS
経皮的心肺補助(Percutaneous Cardio Pulmonary Support;PCPS)は、心肺機能が低下している症例に使用され、一時的に心臓と肺の機能の代行をする装置です。心臓外科や循環器科だけでなく、救急領域でも導入される事が多くなっています。カテーテル室においては、心源性ショック時などにポンプ機能を補助・代行(流量補助)する機器です。
▶保有機器:TERMO社製・SP-101
体外式ペースメーカー
徐脈を解除する必要がある場合や治療中に徐脈が発生する可能性が高い場合、ペースメーカー埋め込み手術までの短期的な徐脈の治療などを目的とした際に経静脈的に電極リードを右室心尖部に留置し心臓に電気刺激を与え、応急的に一定の心拍数に保つことができる機器です。
▶保有機器:BIOTRONIC社製・REOCOR-S / REOCOR-D

手術室業務

手術室業務

手術室では、主に心臓血管外科手術における人工心肺装置・自己血回収処理装置・補助循環装置の準備・操作、及び、手術室における医療機器(麻酔器など)の点検を行っています。また、心臓血管外科だけでなく、必要時には産婦人科・整形外科手術での自己血回収処理装置の準備・操作も行っています。

人工心肺業務

心臓・大血管手術では、一時的に心臓と肺の機能を停止させる必要があります。そのため、私たち臨床工学技士が人工心肺装置を用いて心臓・肺機能の代行し、全身血液循環・ガス交換を行っています。主に、大動脈置換術、弁置換・形成術、CABG(バイパス手術)、その他心臓手術などで使用されます。当院では、手術時に臨床工学技士が2名以上携わり、人工心肺装置・心筋保護装置の操作を行い、医師・看護師と常に連携を取りながら、円滑かつ安全に手術が行われるように日夜業務に励んでいます。

人工心肺症例実績

年度総件数内訳
弁置換
弁形成
人工血管
置換術
冠動脈
バイパス術
2014年度151230
2015年度4301
2016年度5034106
2017年度211542
2018年度241356
2019年度3213127
2020年度7月末まで9711

補助循環業務

補助循環装置とは、自分の心臓では循環動態を維持できない時に心臓の補助をする役割をしている装置であり、IABP(大動脈内バルーンパンピング)・PCPS(経皮的心肺補助)がその代表的な装置です。手術後に患者さんが循環動態を維持できない場合に、補助循環装置を装着して手術室から集中治療室(ICU)へ帰室します。帰室後の管理も臨床工学技士が行っています。

機器管理業務

各部屋に設置されている麻酔器、電気メス等をはじめとした、手術室内ME機器の日常点検を行っています。また、定期点検にあっては院内ME機器管理担当者と連携のもと、機器の安全管理に努めています。

手術室関連機器

人工心肺装置
人工心肺装置とは、心臓・大血管手術の際に、心臓および肺の働きを代行する生命維持管理装置です。右心房にカニューレと言われる管を入れ、患者さんの血液を体外へ取り出し、ポンプを使用して大動脈から体に血液を循環させます。循環回路内に組み込まれた人工肺にて、酸素化と炭酸ガスの排出をし、人工肺に付属している熱交換器で血液温度をコントロールし、体温の調節をします。
自己血回収装置
手術野での出血を、吸引回路を用いて吸引し貯血します。貯めた血液を遠心分離にかけ濃縮させた後、生理食塩水で洗浄を行いバックに回収します。バックに回収された濃縮血液を患者さんに戻すための装置です。
電気メス
電気メスは人体に高周波電流を流して、このときの負荷もしくは接触抵抗によって熱が発生し、この熱が瞬時に細胞を加熱し蒸散することによって切開作用を、細胞の水分を蒸発させタンパク質を凝固させることによって凝固作用をそれぞれ生じさせる機器です。大きく分けてモノポーラー(単極)型・バイポーラー(双極)型・ボールチップ型の3つのタイプに分けられます。
弁置換・形成術
弁膜症などで狭窄や閉鎖不全など機能障害となった弁を形成、又は人工弁に置換します。弁疾患は重症な心不全となる場合もあり、状況によっては緊急手術となるケースもあります。
大動脈置換術
解離や瘤ができた大動脈を人工血管に置換し、破裂を防ぎます。破裂又は破裂直前の場合は緊急手術の適応となることも少なくありません。
冠動脈バイパス術(Coronary Artery Bypass Grafting:CABG)
狭窄や閉塞が起きた冠動脈に、自己血管を用いてバイパスする手術を行います。一般的に内胸動脈(ITA)や大伏在静脈(SVG)を使用します。

透析センター業務

透析センター業務

透析センター業務では院内での血液浄化を24時間体制でBuck upしています。
透析センターでは血液透析療法(Hemodialysis;HD)を中心に27床体制にて月水金2クール、火木土1クールの血液浄化療法を実施しています。血液透析濾過療法 (Hemodiafiltration;HDF / On-Line Hemodiafiltration;O-HDF / Intermittent Infusion Hemodiafiltration;i-HDF)にも対応しており、患者さんの状態に応じて医師・看護師との連携の元、治療に当たっています。また透析センターでは、業務の効率化を計り、患者さんへの安心・安全な医療の提供に努めています。

急性血液浄化療法にあってはCHD・CHF・CHDFを始めとした持続的腎機能代謝療法(Continuous Renal Replacement Therapy;CRRT )に加え、各種アフェレシス(PE・PA・PP)、腹水濾過濃縮再静注法(CART)等にも対応しております。

水質管理業務

血液透析療法では、使用する透析液の清浄化が重要となります。当院では専任の臨床工学技士が担当し、安全・安心な透析液を使用する為に厳密な管理を行なっています。当院では開設以来、エンドトキシン;検出感度以下(< 0.001EU/m?)、生菌数;0 CFU/m?を維持しています。

機器管理業務

血液透析装置は高度管理医療機器に指定されており、日々の日常点検・始業前点検・使用中点検・終業点検は勿論の事、定期的な消耗部品の交換をはじめ、当該機器の精度・安全管理を積極的に行なっています。

臨床業務

血液透析療法はチーム医療です。医師・看護師・臨床工学技士・薬剤師・栄養士・MSWなどの各職種と連携をとり、それぞれの専門性をもって患者様の治療や療養に関わっています。その中で穿刺・透析条件設定・治療中の患者様の状態への対応・返血は業務分担する事なく、看護師と臨床工学技士で補完しあいしながら業務に当たっています。また検査データなどから透析量の適正化を計るために積極的に医師へ上申し、それぞれの患者さんに合った透析療法を提供しています。

透析情報管理

電子カルテシステム内に透析専用アプリケーションを構築する事により、医事システムとの連携、透析患者さんの情報(透析条件・検査結果など)からスケジュール、コストを一元管理しています。一元管理する事により、業務の効率化が計られ、スタッフが患者さんのベッドサイドにいる時間が大幅に改善されています。

超音波診断装置の活用

血液透析療法では、治療毎にシャント血管に2本の太い針を刺すことが必要となり、患者さんによっては大きな苦痛や痛みを伴います。また透析患者さんの高齢化や長期症例、糖尿病の増加から、血管の荒廃や穿刺困難な状況も増加しています。当院では穿刺でのストレスを最小限に抑えるため、超音波診断装置を用いたエコー下穿刺を積極的に行っています。超音波診断装置を用いて血管の状態を確認しながら穿刺を行う事により、穿刺困難な患者さんの負担を軽減することができます。

また定期的なシャント管理でも、血管の性状や血流量などの評価に用い、患者さんのシャントを長く・良い状態で使用できるよう管理の一助としています。

血液浄化療法・実績

期間HD
HDF
O-HDF
I-HDF
特殊血液浄化
CHDFPAPEDHPCART
2015年度10,739-450320
2016年度11,5733121850754
2017年度9,8701,185420522
2018年度9,1311,267670013
2019年度6,7442,971943005
  • 多人数用透析液供給装置(NCS-W;ニプロ社製)
  • A粉末自動溶解装置(NPS-AW;ニプロ社製)
  • B粉末自動溶解装置(NPS-BW;ニプロ社製)
  • 逆浸透精製水製造装置(DCnano40Ao-HR-NTh;三菱レイヨンクリンスイ社製)
  • 個人用透析用水作製装置(MRC-RO-NFX4T;三菱レイヨンクリンスイ社製)
  • 血液透析装置(NCV-1・NCU-12;ニプロ社製)
  • 血液透析濾過装置(NDF-01;ニプロ社製)
  • 多用途透析装置(NCV-3・NCV-11;ニプロ社製)
  • 特殊血液浄化機器(AcufilMulti-55X-II;日本ライフライン社製)
  • エンドトキシン捕捉フィルター(CF-609N;二プロ社製)
  • 生物発光式エンドトキシン計(ルミニッツET BLA-01E;東亜DKK社製)
  • ラップトップ型超音波画像診断装置(FC1-X V3.0;富士フイルムメディカル社製)

関連キーワード

血液透析(Hemodialysis;HD)
血液透析は、血液を体内から外部へと出して機械を通して血液をきれいにし、再び体内に循環させる治療法です。このため、1分間に約200mlの血液を取り出す必要があり、これを長時間持続させるので、普通の血管ではこれだけの血液流量を確保できません。

このため、一般的には血液の出入り口となるシャントを作成します。シャントは、手術によって静脈と動脈をつなぎ合わせて太い静脈にしたものです。体外へ引き出された血液は、血液ポンプを経てダイアライザーと呼ばれる、人工腎臓に送られます。ダイアラザーの中で余分な老廃物と水分が除去されてきれいになった血液は静脈側の穿刺針から体内に戻っていきます。
血液濾過(Hemofiltration;HF)
限外濾過圧を用いて透析器と同じ構造をした血液濾過器(ヘモフィルター)から、血液中の水分と老廃物、電解質を濾液として除去します。除去した濾液の代わりに透析液と類似した成分からなる補充液を回路より血液内に注入します。補充液は血液中に直接注入するため、点滴する薬と同じくきれいな薬剤です。

1回の治療で濾液として除去する量は、通常体重の1/3以上とされています。血液透析と比べると体にたまった分子量の大きな物質の除去性能に優れていますが、分子量の小さな老廃物の除去は劣ります。また、血液透析と比べ血圧低下を起こしにくいため、透析困難症(血液透析によって血圧低下等を起こす)、緑内障、心臓に障害がある、透析アミロイド症などの患者さんの治療に向いています。
血液透析濾過(Hemodiafiltration;HDF)
血液透析濾過器を用いて血液透析と血液濾過を同時に行う方法です。透析液を流しながら濾過を行い、補充液を注入します。血液透析と血液濾過の長所を兼ね備えた治療法で、血液透析と比べると体にたまった分子量の大きな物質の除去に優れ、血液濾過と比べると分子量の小さな老廃物の除去に優れています。また、血液透析と比べ血圧低下を起こしにくいため、透析困難症(血液透析によって血圧低下等を起こす)、透析アミロイド症などの患者さんの治療に向いています。
オンライン血液透析濾過(On-Line Hemodiafiltration;O-HDF)
オンラインHDFは、透析液をそのまま補充液として使用する血液透析濾過療法です。そのため濾過するために足される補充液量を多くすることが可能で、通常のHDFより多くの濾過をかけることができるため、より多くの老廃物を取り除くことができます。 透析を長期続ける事により起こってくる合併症に透析アミロイドーシスがあります。

これは、β2-ミクログロブリンという物質が関節や骨に沈着して神経を圧迫し、手の親指から中指にかけて痛みやしびれが出現する手根管症候群などを起こします。このアミロイドーシスの原因であるβ2-ミクログロブリンの沈着を抑制し、合併症を予防することができるのもオンラインHDFの特徴です。

一般的に言われているオンラインHDFの利点は
①透析患者さんの予後を改善させる(長生きができる)
②心臓への負担が少なく、血圧の低い方に有効
③酸化ストレスが改善する(炎症マーカーが減少する)
④貧血が改善する
⑤栄養状態が良くなる等があります。
しかし、透析液を補充液に使用するためには厳密な透析液の水質管理が必要となります。オンラインHDFを行うためには、細菌やエンドトキシンを測定感度以下になるまで清浄化する必要があります。
間歇補充型血液透析濾過(Intermittent Infusion Hemodiafiltration;i-HDF)
透析膜を介して濾過・補充を断続的に行う新しいタイプのオンライン血液透析濾過です。通常の血液透析中に設定した一定間隔の時間で、透析膜の外(透析液)側より逆濾過にて血液回路内に透析液を補液する治療法です。補液した分の透析液はその透析治療中に除水するので体内に残ることはありません。 透析液を一定間隔で補液することにより、除水による末梢循環障害の改善、血圧の低下を抑制します。
持続的腎機能代謝療法(Continuous Renal Replacement Therapy;CRRT)
病因物質の除去や水分バランスの是正を緩やかに行う治療法で、特に急性腎不全を合併した心不全や肝不全、多臓器不全などが適応になります。(CHDFやCHD、CHFなどはこれに相当します。)
直接血液吸着療法(Direct Hemoperfusion;DHP)
血液中に含まれる病因物質に合わせた吸着剤(リガンド)を選択することにより、病因物質の選択的な除去、または、血球成分(顆粒球・単球)を吸着し除去を行う治療法です。代表的なものとしてPMXやL-CAP等があります。
血漿交換療法(Plasma Exchange;PE / Plasma Adsorption;PA / Plasmapheresis;PP)
分離器で血液から血漿成分を分離し、分離された血漿成分を正常な血漿などに置換する療法(PE)です。劇症肝炎等の治療に用いられ、凝固因子の補充や老廃物の除去を目的に行います。

また、選択的に病因物質を除去する療法として、血漿分離器で分離された血漿を吸着筒に灌流させて目的病因物質を吸着除去する治療法(PA)があり、家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia;FH)、閉塞性動脈硬化症(Arteriosclerosis Obliterans;ASO)、肝不全(高ビルビリン血症)等で用いられる治療法です。

分離膜を2個使用した二重濾過血漿交換療法(DFPP)があり、多発性骨髄腫(Multiple Myeloma;MM)、全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus;SLE)、家族性高コレステロール血症(FH)等が適応になります。
腹水濾過濃縮再静注法(Cell-free Concentrated Ascites Reinfusion Therapy;CART)
癌や肝硬変などによって溜まった腹水(または胸水)を濾過濃縮して、有用なタンパク成分を回収、患者さんに再静注する治療法です。

院内ME機器安全管理

院内ME機器安全管理業務

院内ME機器管理業務は呼吸の代替や補助を目的とする人工呼吸器、腎代謝の代替をする血液浄化装置、循環の補助を目的とする経皮的心肺補助装置(PCPS)や大動脈内バルーンパンピング装置(IABP)、点滴や輸液の管理を目的としたインフュージョンポンプ(シリンジポンプ・輸液ポンプ)、除細動器、生体情報モニタ、低圧持続吸引装置等々、多岐にわたるME機器を常に最良の状態で患者さんに使用できるよう、保守・点検、修理、および臨床技術提供を行っています。

ME機器管理運用フロー

ME機器管理業務

人工呼吸器、インフュージョンポンプ、低圧持続吸引器は中央管理を行っています。これらのME機器は、使用後臨床工学科(CE室;医療機器安全管理室)にて終業点検や定期点検を行い、必要時にはいつでも使用できるよう保守・管理を行っています。

院内の各部署に常設されているME機器(除細動器・患者監視装置など)や稼働中のME機器(人工呼吸器やPCPS、IABPなど)は、担当の臨床工学技士が当該部署にて動作確認など使用中点検を行い、使用後は終業点検などの保守管理を行っています。

シリンジポンプのメンテナンス

ME機器・点検・保守・実績件数

期間ME機器
点検・保守
総件数 (台)
内訳
輸液ポンプシリンジポンプ低圧持続吸引器除細動器/AD人工呼吸器
2015年1月1日~12月31日3,3591,122885286867199
2016年1月1日~12月31日4,2931,4041,490362922115
2017年1月1日~12月31日4,3161,6171,247342922188
2018年1月1日~12月31日4,9592,0951,378390926170
2019年1月1日~12月31日4,7531,9331,339344944193

院内ラウンド業務

稼働中の人工呼吸器や体外式ペースメーカー、補助循環装置などは臨床工学技士が始業前点検・始業時点検を行い、稼働中は各部署のラウンドをし、使用中点検にて機器の正常動作を確認しています。また人工呼吸器を長期使用されている場合には呼吸回路の交換を行ったり、体外式ペースメーカーの電池交換を行うなど医療機器安全管理に努めています。

また、使用されている機器の設定条件が患者さんにとって適正な条件であるか積極的に上申し、担当医師・看護師などとのディスカッションから患者さんにとって最善の医療を提供できるよう取り組んでいます。


使用中点検

睡眠時無呼吸症候群(SAS)外来業務

睡眠時無呼吸症候群(SAS)外来では、医師にSAS(Sleep Apnea Syndrome)と診断された患者様に対してCPAP(シーパップ)療法の導入や使用に関する指導を行っています。CEは専門的な知識を活かし、機器の操作説明やマスクフィッティングの指導などに携わっています。患者様がCPAP装置の使用に関する疑問などがあった場合にはすぐに対応できるような体制をとっています。

SASについて
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に呼吸が止まる、または浅く・弱くなることで十分な睡眠をとることができず、日常生活に障害を引き起こす疾患です。多くの場合、気道が閉塞するまたは狭くなることが原因で発生します。夜間に繰り返される無呼吸によって血液中の酸素が低下し、無呼吸ごとに中途覚醒が発生し、身体に悪影響を及ぼすとともに睡眠を妨げ日中の眠気を増加させます。
CPAP療法について
CPAP装置からホース、マスクを介して空気を送り、気道が閉塞することを防ぎます。適切なCPAP療法を継続して行うことにより、睡眠中の無呼吸やいびきが減少し、日中の眠気などの症状が改善します。
CPAP装置は、フィリップス社製のドリームステーションやレスメド社製(帝人ファーマ)のスリープメイト10・エアーミニを採用しています。

医療ガス関連業務

定置式超低温液化酸素ガスとマニフォールドの点検を毎日行い、常に安定した状態で医療ガスが供給されるよう対応しています。また震災などの天災で医療ガスを供給できない場合は、臨床工学技士が対応し、院内への連絡および対策を行います。

ME機器トラブル対処

使用中に発生したME機器トラブルは電話1本、臨床工学技士が現場にて、その都度対処しています。また、機器の動作確認や各部署からの点検依頼には、点検結果を客観的なデータから検証し報告書をもって各部署へフィードバックを行っています。医師や看護師などに対しME機器の使用に関する勉強会開催やアドバイスなど情報提供も積極的に行っています。

Medical Device Information(MDI)の発行

医療安全責任者と連携のもと、医療機器安全管理責任者を中心とし、院内での医療機器に関する新しい取り組み、院内で起こった医療機器関連インシデント報告や各種関連機関より発出された医療安全情報をもとに、周知が必要な医療機器使用に関する情報の発信を行っています。

Medical Device Information

院内で使用しているME機器

人工呼吸器
さまざまな原因によって自己の呼吸では十分な換気が行えなくなった際に、換気を補助または強制的に行う器械で、ベンチレーター、レスピレーターともよばれます。現在使用されている人工呼吸器には種々の補助装置が装備されており、肺が障害されたために血液の酸素化が不十分となった場合にも使用されます。
▶保有台数:8台
(ドレーゲルメディカル社製:Savina / フィリップス・レスピロニクス社製:V-60)
ハイフローセラピー
ネーザルハイフローとは、ネーザル(鼻)カニュ ーラを使用した高流量酸素投与システムです。高流量の酸素ガスを流すため
①呼気(つまりCO2)の再吸入がない②気道中に残っている呼気を 洗い出して、死腔(気道のうち血液とガス交換を行わない部分)を減らす効果がある
③普通の酸素マスクや経鼻酸素みたいに、酸素以外の部屋 の空気を吸わない
④流す酸素濃度とほぼ同等の吸入酸素濃度(FiO2)に 設定できるため、患者は設定した酸素量そのままを吸引できる(酸素濃 度は20~100%まで設定可能)
⑤ネーザルハイフローであれば、人工呼 吸器としての加湿機能もそなえているので、充分な加湿を行いつつ安定して30L/分以上の酸素供給ができる⑥鼻に着用するため、会話や食事が可能。患者のQOLの維持ができる⑦口を閉じて吸入すると軽度のPEEP(呼気終末陽圧)効果がある。
▶保有機器
(フィッシャー&パイケル社製:AIRVO2)
除細動器
Vf(心室細動)やVT(心室頻拍)で不規則に動いている心臓に電気ショックを加え、心臓の電気信号をリセットさせて正常な心臓のリズムに戻す機器です。

また、デマンド(自己心拍を感知した場合はペーシングを休み、自己心拍がなければペーシングする)やフィクス(設定した心拍数でペーシングし続ける)などの体表ペーシングやAEDの機能を兼ね備えています。
▶保有台数:12台
(日本光電社製:TEC-5621・TEC-7631・TEC-7751)
インフュージョンポンプ
点滴静脈注射を施行する際に利便性と安全性を高めるために使用される機器です。
輸液ポンプとシリンジポンプに大別されますが、より少量で、より正確な輸注を必要とする際にはシリンジポンプを使用します。時間当たりに設定した量の薬液を正確に注入するための機器です。
▶保有台数:輸液ポンプ×50台・シリンジポンプ×50台
(テルモ社製:TE-131・TE-331S・TE-351、大研医療機器社:CSP-120)
生体情報モニタ
バイタルサインをモニタリング(=継続的に測定・記録)する装置です。心電図・心拍数、血圧、動脈血酸素飽和度、体温といったバイタルサインをモニタリングし、患者の状態が異常になったときにはアラーム音などで知らせる装置です。
▶保有台数:42台
(日本光電社製:BSM-2301・BSM-4103・BSM-5105・BSM-6701・PVM-2701・WEP-4204・CNS-6201)
低圧持続吸引器
胸部及び腹部等の外科手術によって生じる患者の創部からの排出液や分泌物等を体外へ持続的に吸引するための電動ポンプを使用した低圧持続吸引装置であり、UP/DOWNスイッチで吸引圧の設定や、吸引時間・休止時間の設定ができ、連続吸引の他、間欠吸引をすることができる。
▶保有台数:20台
(泉工医科工業社製:MS-008・MS-009)
体外式ペースメーカー
徐脈を解除する必要がある場合や治療中に徐脈が発生する可能性が高い場合、ペースメーカー埋め込み手術までの短期的な徐脈の治療などを目的とした際に経静脈的に電極リードを右室心尖部に留置し心臓に電気刺激を与え、応急的に一定の心拍数に保つことができる機器です。
▶保有台数:4台
(BIOTRONIK社製:REOCOR IS・REOCOR ID×2)