ご挨拶
『厚木市内唯一の心臓血管外科専門施設として』
心臓血管外科とは主に心臓の病気や大動脈の病気などの手術を担当する診療科です。
2023年4月より心臓血管外科の常勤医師2名体制となり、新チームになりました。
厚木市内唯一の心臓血管外科専門施設として近隣の開業医の先生や厚木市内や市外の病院からの紹介患者様も日々増えてきております。
当院で対応する疾患としては、虚血性心疾患、心臓弁膜症、大動脈疾患、末梢血管疾患、シャント関連手術などがあります。
虚血性心疾患は、労作時の胸部違和感や胸痛、動悸といった症状を認めることがあり、
症状を頻回に認める場合には、急性心筋梗塞に移行する可能性もあり、致死的な経過を辿る可能性があります。当院では、外来での冠動脈CT検査や1泊2日入院で行うカテーテル検査を行い、必要であればカテーテル治療や冠動脈バイパス手術を行っております。
あくまでも治療の第1選択はカテーテル治療ですが、中には対応不可能な患者様がおり、
その場合には冠動脈バイパス手術を行っております。冠動脈バイパス手術は、歴史的には、人工心肺を使用するオンポンプによる手術から始まり、人工心肺を使用しないオフポンプでの手術が始まりました。後者の方が人工心肺を使用しないので身体の負担が少なく、術後の回復も早く、脳梗塞発症率も低いと言われておりますが、心臓が動いたまま手術を行うので難易度があがるとも言われております。2020年の日本における診療実態調査報告によりますと、オフポンプの実施率は全体の約45%となっております。当院では冠動脈バイパス手術を行う上での方針として、オフポンプによる手術を基本としております。また従来のオフポンプによる冠動脈バイパス手術は胸の真ん中を縦に20-30㎝程度切開する胸部正中切開による手術ですが、当院では、術前検査で諸条件を満たす患者様には写真にあるように
胸部側方を約10㎝程度切開する「MIDCAB(低侵襲心拍動下冠動脈バイパス手術)」を積極的に行っております。この手術はオフポンプ手術の実施施設の中でも、行っている施設は少ないと言われております。また従来のMIDCABは冠動脈への1本のみのバイパス手術でしたが、当院では写真にあるように胸部側方切開での多枝バイパスである「Multi-Vessel MIDCAB」も行っております。
心臓弁膜症は、労作時の息切れや易疲労感、動悸、胸痛などの症状を認めることがあり、
中には突然死を引き起こすものもあります。心臓弁膜症は、心臓の各部屋(心房と心室)にある逆流防止の弁が何らかの理由で変形や劣化、硬化してしまい、弁の中の血流の通り道が狭くなる「狭窄症」と、弁が閉まりにくくなり逆流が生じる「閉鎖不全症(逆流症)」があります。基本的に成人における弁膜症で問題となる弁は、心臓の出口にある「大動脈弁」と
主に血液を全身に送り出す役割のある左心室と左心房の間にある「僧帽弁」です。
中でも大動脈弁狭窄症は突然死の原因になると言われ最も恐ろしい弁膜症と言われております。手術の方法としては、大動脈弁に関しては弁置換術、僧帽弁に関しては弁形成術および弁置換術を基本術式としております。弁置換を行う場合には、使用する人工弁は、生体弁と機械弁がありますが、65歳以上の高齢者の方には生体弁、65歳未満の方には機械弁が推奨されておりますが、術後の抗凝固薬(ワーファリン)の使用が、生体弁では必要な期間が短期間であることが多いのに対して、機械弁では一生涯にわたり必要となる可能性が高く、出血などの危険性もあるため、患者様のご希望を考慮した上で人工弁の種類を決めております。心臓弁膜症に対する外科治療も従来の胸部正中切開による手術が基本ですが、術前検査で諸条件を満たす患者様には、写真にあるように胸部側方切開による手術であるMICS(低侵襲心臓手術)も行っております。
大動脈疾患は、基本的には無症状でレントゲンや超音波、CT検査などで偶然発見されることが多いですが、大動脈瘤は拡大すると破裂や解離を生じ、致死的になる可能性もあり、
手術が必要となりますが、当院では従来の開胸もしくは開腹人工血管置換術に加え、胸部および腹部大動脈ステントグラフト内挿術も行っております。それぞれの特徴を生かした治療方法を患者様と相談の上、選択しております。
末梢血管疾患は、下肢閉塞性動脈硬化症や下肢静脈瘤などが挙げられますが、下肢閉塞性動脈硬化症に対しては、内膜摘出術やバイパス手術を行っており、下肢静脈瘤に対しては
最新の治療であるレーザーによる血管内焼灼術を行っております。シャント関連手術につきましては、近隣の医療機関(市中病院や透析クリニック)と連携しながら、新規透析用シャント造設、シャントPTA(血管内治療)、長期留置カテーテル留置などを行っております。
2023 年(2023/1/1~12/31)の手術件数は、心臓手術および胸部大血管手術は 43 例で、心臓血管外科専門医領域の症例は119例と前年度より増加しました。地域の近隣医療機関と連携しながら更なる発展を目指していきたいと思います。