ご挨拶
当科では、健康上、医学上の理由や、信教上の理由で同種血輸血の治療を望まれない方に対し、無輸血プログラムを用いた外科手術をおこなっています。ご希望の方は初診時に遠慮なくお申し出下さい。
人体を循環する血液は各臓器の機能を維持し、種々の感染を防御するなど、生命維持に不可欠な働きをしています。外科手術や事故による外傷、消化管出血の際、体内から血液が失われ、これを補う目的で輸血が必要となる場合があります。
しかし、ご承知の通り他人の血液を用いる同種血輸血は、今もって感染症(肝炎ウィルスや細菌汚染)やアレルギー反応(皮疹や発熱)、重篤な合併症(免疫機能低下、GVHD)や医療事故(血液型や輸血バッグの取り間違え)の危険性をはらんでいます。さらに献血による輸血供給量は限られているために、日常診療での使用輸血の節減は今日重要な課題となっています。
近年、こうした観点から同種血輸血を極力避け、当面の生命維持だけでなく、長い目でみた生命予後の延長、健康維持の目的で不必要な輸血を極力避けるPBM(Patient Blood Management; 患者中心の輸血医療)という概念の下に、同種輸血に取って代わる治療が注目されています。
私たちはこうしたPBMを導入したいわゆる『無輸血外科治療』を長年に渡って実践してきました。その結果、出血や癌ですでに貧血の状態にある方、輸血が必要となる手術を受けることができない方が無輸血治療を受けられ、一般の方と同等の成績やその後の健康を維持していただくことができています。