ご挨拶
当科では、健康上、医学上の理由や、信教上の理由で同種血輸血の治療を望まれない方に対し、無輸血プログラムを用いた外科手術をおこなっています。ご希望の方は初診時に遠慮なくお申し出下さい。
人体を循環する血液は酸素を体中の細胞に運搬供給するだけでなく、各臓器間の機能の繋がりを維持し、免疫機能により種々の感染を防御するなど、生命維持に不可欠な働きをしています。外科手術や事故による外傷、消化管出血の際、体内から血液が失われ、これを補う目的で輸血が必要となる場合があります。
しかし、他人の血液を用いる同種血輸血は、血液感染 (肝炎ウィルスや細菌汚染)だけでなく、免疫機能の低下や変化による術後感染症や癌の術後再発の増加などの合併症を起こすことが知られています。さらに少子高齢化社会の現在、献血人口の減少、高齢化による輸血需要人口の増加により、日常診療で使用する輸血の節減は今日重要な課題となっています。
近年、こうした観点から同種血輸血を極力避け、自身の血液が持つ重要な機能を維持し (Blood Health)、当面の生命維持だけでなく、長い目でみた生命予後の延長、健康維持を目的として不必要な輸血を避けるPBM (Patient Blood Management)という新しい血液管理が注目されてきました。2021年にはWHO(世界保健機構)から各国にこのPBMを実践するよう勧告がなされました。私たちはこうしたPBMを導入したいわゆる『無輸血治療外科』を1990年後半以来長年に渡って実践してきました。その結果、出血や癌で既に貧血状態にある方、輸血が必要となる大きな手術を受ける必要のある方が当科の無輸血治療を受けられ、一般の方と同等もしくはより優れた術後成績やその後の健康を維持していただくことができています。