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鼠径ヘルニアでお悩みの方に、この病気の詳細と治療方法をご説明します。

2017/06/05

鼠径ヘルニアとは?
古くから脱腸と呼ばれているものです。ヘルニアとは、体内の臓器などが、本来あるべき部位から「脱出・突出」した状態を指します。鼠径(そけい)は両足のつけねの部分のことを示しますので、鼠径ヘルニアとは、お腹の中の腸や脂肪組織の一部が、鼠径部の筋肉の間から皮膚の下に出てくる病気です。鼠径部に痛みや違和感を感じたり、触ると柔らかいものを触れることが多いです。


鼠径ヘルニアは生まれたばかりの乳児から子供、成人、高齢者など、どの年齢でも起こり得ます。乳幼児や学童の場合は、お母さんの胎内で発育の過程で生殖器が体表に移動した"通り道"が完全に閉じる前に、そこへ腸などが迷入してくることが主な原因ですが、高齢者の場合はこれに加えて、お腹を守る複数の腹筋が重なり合う中で一番弱くなる部分が鼠径部で、そこへ内側から腸などが迷入することが原因の場合が多いです。したがって鼠径ヘルニアは子供に多く、成人で少なくなり、40歳以降に増えてくる病気で、60歳以上の方では100人に4人が罹る病気と言われています。



鼠径ヘルニアになりやすい人
乳幼児の鼠径ヘルニアは先に述べましたように、先天的な原因によるものが殆どですが、成人の鼠径ヘルニアの場合は以下に示しますようにある程度の特徴があります。




鼠径ヘルニアの症状
最初は立った時やお腹に力を入れた際に鼠径部にしこりや違和感を感じたりしますが、そのしこりが徐々に大きくなり、こぶし大の大きさになることもあります。横になったり、手で押さえたりすると引っ込むのが特徴です。しかし、しこりが急に大きく硬くなったり、手で押さえても引っ込まなくなり激しい痛みを伴う状態しなる場合があり、この状態をヘルニア嵌頓(かんとん)と呼びます。これは非常に危険で放置すると腸閉塞や腸壊死などから腹膜炎を併発し緊急手術で腸を切除する必要が生じ、生命に危険が及ぶ大手術になることがあります。したがってヘルニアと診断されたら早い時期に治療を受けることが大切です。




鼠径ヘルニアの種類
一概に鼠径ヘルニアといっても、図のように鼠径部の中でヘルニアが出てくる場所が違いますので、その場所が内側か、外側か、部位が少し下の大腿部か、左右両側かなどで様々なタイプがあります。実際の手術では、確実にどのタイプのヘルニアなのかを見極めてその部位を修復することが再発防止に繋がります。




手術方法
鼠径ヘルニアの治療法は手術しかありません。手術の要点は弱くなった筋肉や組織を補強することで再発を防ぐことです。現在は1970年台から開発、改良されてきたメッシュと呼ばれる人工補強材を用いて筋肉を補強する方法を用います。

手術の方法はヘルニアの部位を中心に重なり合う筋肉の間にメッシュを広く挿入し補強します。挿入のアプローチとして2通りあり、皮膚を切開し前方から挿入する方法と腹腔鏡を用いてお腹の内部から挿入する方法があります。当院では患者様の状況やヘルニアの状態に応じて手術方法を選択しています。



鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡手術について
鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術は日本では1990年台初めに行われた比較的新しい手術方法です。現在の普及率は、2013年の厚生労働省による集計ではヘルニア手術全体の13.7%の腹腔鏡下手術が行われています。
近年では手術器具の開発向上などもあり腹腔鏡下手術を導入している施設は増加しています。



腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術の優れている点
第一に、お腹の中にカメラを入れて腸管が迷入している孔(通り道)を直に見ながら手術を行うので、左右両側のヘルニアや複合型ヘルニアの見落としがなく確実な修復が行えることです。その他の利点として、「1.皮膚を切開する前方アプローチに比べると手術後の痛みが軽減される」、「2.整容性に優れる」、「3.両側のヘルニアでも傷を追加することなく同時に手術が可能」、「4.剃毛の必要がない」、などが挙げられます。



腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術の短所
一つには、手術に高度な技術を要することが挙げられます。これには特殊な手術器具の扱い方や特性に習熟した外科医が行います。また腹腔内から操作しますので、腸や臓器の損傷が無いように細心の注意を払う必要があります。二つ目は麻酔は全身麻酔で行う必要があります。三つ目に細かい丁寧な手術操作のために手術時間が少し長くなる傾向があります。



腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復手術の実際
お臍に1cmほどの穴をあけそこから炭酸ガスをいれお腹を膨らませた後、下図のように腹腔鏡と呼ばれる細小のカメラを入れお腹の中を観察し、既知のヘルニアの部位や他に無いか正確に確認します。左右に5mmの穴を追加し修復術を開始します。腹膜を切開し、ヘルニアの部位や筋肉のの状態を把握し、メッシュを挿入し、腹膜を閉じます。お腹の傷は目立たず痛みは少なく麻酔から覚めたら自分でトイレに行け、食事もすぐに開始となります。手術後の検査で問題がなければ当日でも退院可能性となります。退院後は特に日常動作の制限はなく、外来に一度診察に来ていただきます。

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